「事業譲渡」により、経営者・従業員それぞれの「個人」の再建を図る

業種

映像コンテンツ制作事業

規模

年商約10億円、従業員数約15名

状況

テレビ番組や映画等の映像を受託する独立系の制作会社であったが、建設業同様1件あたりの制作費が高額となる「プロジェクト請負業」の業態であるため、資金繰りが不安定となり、それを補うべく「制作代金引当融資」による大規模な「自転車操業」状態にあり、その結果、損益実態と資金繰りが大きく乖離していき、経営者においても事業実態を把握できない状況に陥っていた。
そのため、相談をうけ、簡易的な財務調査を行った結果、大規模な実質債務超過に陥っており、もはや金融機関からの追加調達はできなどころか、資金繰り上、期日返済も不可能であり、一般商取引先への支払いも含めた総合的な条件変更対応を要する状況にあった。

スキーム等

経営実態を精査した結果、実質債務超過の規模や金融債務の状況からして、「教科書的な私的整理」ができる状況を既に逸することが確認される一方、「不義理」が許されない特殊な業界特性から法的整理を活用すれば各協力会社との取引も停止してしまい事業の継続も困難であることが想定されたため、まずは金融債務についての条件変更を取り付ける一方、商取引先に対しても一軒一軒訪問のうえ分割払いの交渉を行うことによりまずは資金繰りの安定化を図ることとした。
同時に見通される収益水準ではすべての債務を弁済するには極めて長い期間を要する実態がある一方で、優良顧客からの継続的受注があり、複数の有能なプロデューサーを擁する組織には相応の事業価値があることから、財務面を支援して頂くスポンサーの探索を実施、その結果映像制作分野への進出を希望するベンチャー企業に対して制作チームの多くの部分を事業譲渡、譲渡代金をもって債務の圧縮を図る一方で大口の特番等、資金力を要する案件受注がなくなったことから資金繰りの安定化を図り、規模大きく縮小した事業構造により企業としての継続を果たした。

結果

主要事業の一部を譲渡することにより、事業規模も大きく縮小する結果となったものの、安定的な収益を確保できる状況になるとともに、資金繰りの安定化が図れたことにより経営者側は事業の継続による「生活の確保」を図る一方、単純破綻となれば失業の危機にあった従業員については希望者全員が事業譲渡先の従業員として安定雇用が確保されるとともに、一部従業員においては一連のオペレーションをきっかけに転職や独立を図ることを決意、「それぞれの道」に分かれながら、個々の人生設計も再構築され、その後のさらなる活躍につながっていった。